MADEMOISELLE MARCH 1992,APRIL 1992

アメリカの雑誌カバーの撮影は普通<カバートライ>といって、1日に1つのカバーを2人以上のモデルさんでトライします。また、モデル1人につき2つ以上の違ったヘアー、メイクでイメージを変えて撮ります。そしてその中の一つが選ばれてカバーに使われるのです。1つのカバーを決めるのに何人かのフォトグラファーが撮影する事もあります。なかなか大変でしょう? カバーによって雑誌の売れ行きが違うのですからとても慎重にならざるをえないのでしょう。それだけ雑誌にとってカバーは重要で、だから自分の手がけた物がカバーになるのはとても狭き門だったのです。

アメリカの雑誌のカバーにはヨーロッパと違い、よりナチュラルで明るい物が要求されます。ですからおのずとメイクはナチュラル!!なものが多いのですが、このカバーのときは編集者、フォトグラファー、ヘアー、メイクで1960年代風のとてもフェミニンなイメージと、1970年代風の健康的なイメージでいつもより強いインパクトのあるカバーにしようと決めたのです。モデルさんが2人だったのでそれぞれのイメージに合った60年代、70年代風のメイクをしました。当時、まつ毛をつけるメイクがトレンドだったので、アイラッシュを2枚半重ねづけし、ダークブルーのアイラインをひき、その上からブルーのアイシャドウをつけアイメイクを強調した60年代風に仕上げました。そして唇にはマットなオレンジを! 中々いい感じでしょう?

このときのフォトグラファーはカルバンクラインなどの広告を手がける、スティーブン・クラインという有名な人でした。「彼にビューテイーを撮らせたら、右に出るものもいない!」と言われるくらい凄い人でメイクには特にうるさかったのですが、この日のメイクには彼も大喜び! それ以来彼からの仕事も多く来るようになったほどです。

さて、もう一人のモデルさんはとても健康的でセクシーな人だったので、70年代風のメイクに挑戦しました。まず肌は日焼けした感じにして健康的に。アイメイクはつけ睫毛を1本1本切って、彼女のまつ毛の間に植え付けるようにつけました(私、こういうの得意なんです)。勿論下まつ毛にもね!! 唇はグロッシーなコーラル色。なかなかセクシーだと思いませんか?

この2パターンのカバートライは、どちらも落とすにはあまりにも素晴らしい! ということで 2ヶ月分のカバーになったという本当にまれに見るラッキーに恵まれたのです。ファッション業界の人達をちょっと騒がせたほどの話題作になったのです。この時ほどメイクアップアーティストになって良かったと思ったことはありませんでした!